会長の挨拶 2014年
日本高圧力学会の役割について
日本高圧力学会会長 高橋 博樹(日本大学文理学部)
圧力は温度などと共に実験環境を決める基本的な物理量の一つであり,この実験環境を可能な極限まで持って行くことで,未知のフロンティア領域での研究が行われてきました。例えば,低温のフロンティア領域を広げたオランダのOnnes はヘリウムの液化に成功することによって超伝導という全く新しい物理現象を発見しています。高圧力のフロンティア領域ではBridgman が物質の圧縮率や高圧力下で誘起される相変態などを次々と明らかにし,物理の基本的な法則の確立に貢献すると同時に,高圧物質合成による新物質創成などの魅力ある研究分野の基礎を築いています。その後の進展で,高圧力技術は物理学,化学を始め地球科学や生命科学などより広い分野とも交流が開け,物質科学のなかでも重要な実験手段の一つとなっているのは周知の事実です。しかしながら技術の普及という観点からは,高圧力技術は特殊技術で大がかりでお金がかかることもあり,元々他の分野との交流は少なく,個人のブレークスルーによって進歩してきた側面があるため,低温技術などと比較してスムーズには発展してこなかったかも知れません。このように科学の発展は個人のブレークスルーによる部分がありますが,基本的には他の研究者や研究グループとの連携が必要不可欠です。
日本高圧力学会はご存知のように1959 年に始まる高圧討論会の参加メンバーを母体として1981 年に組織され,諸先輩方の多大なご努力のおかげで,高圧討論会の開催,学会誌の発行を継続し,高圧力科学セミナーの開催,研究・作業グループの活動,各賞の授与,国際会議のサポートや人材育成を主眼とした若手のサポートなどの活動を積極的に実施しております。学会の今後の活動として,まずこれまでと同様に,高圧力に関する研究者の情報交換の場を提供することを基本と考えていますが,潜在的高圧ユーザーの開拓にも目を向けていきたいと考えております。
私の専門とする基礎物性科学の分野では,新奇物質の評価手段に必ずと言っていいほど高圧力が利用されるようになってきていますが,非常に高い圧力が必要であったり,特殊な測定であったり,圧力の静水圧性や異方性圧縮の制御が重要であったりする場合などには,高圧力技術に不慣れなグループにとってはハードルが高くなってしまいます。また,高圧力下の物性測定により,新奇な現象が発見される場合は多々ありますが,精密に物性を調べようとすると,圧力が高くなるほど測定精度を上げるのが困難になり壁に突き当たることもしばしばあると思われます。このような話は時々聞こえてきますが,今後の科学の発展のためにも,高圧力技術開発は重要であるとの認識を新たにしております。例えば,現在の研究・作業グループが対象としている,次世代の大型放射光施設利用では,測定精度の改善や,新しい測定手段の開発などが期待でき,高圧力科学の裾野がさらに広がるのではないかと期待しています。
学会の会員数は約600 名前後で毎年推移しており,それほど大きな規模ではありませんが,お互いの顔が見え,会話できる雰囲気があります。こういった雰囲気は今後も大事にしたいと思っています。学会運営を陰で支えてくださっている事務局も3 年目を迎え,だいぶ軌道に乗ってまいりました。また,学会業務が円滑に進むよう,今年度は評議員の皆様にも業務を分担していただいております。評議員,幹事の皆様の助けをお借りしながら,活発な活動を推し進めていきたいと考えております。会員の皆様のご協力をお願いいたします。
日本高圧力学会はご存知のように1959 年に始まる高圧討論会の参加メンバーを母体として1981 年に組織され,諸先輩方の多大なご努力のおかげで,高圧討論会の開催,学会誌の発行を継続し,高圧力科学セミナーの開催,研究・作業グループの活動,各賞の授与,国際会議のサポートや人材育成を主眼とした若手のサポートなどの活動を積極的に実施しております。学会の今後の活動として,まずこれまでと同様に,高圧力に関する研究者の情報交換の場を提供することを基本と考えていますが,潜在的高圧ユーザーの開拓にも目を向けていきたいと考えております。
私の専門とする基礎物性科学の分野では,新奇物質の評価手段に必ずと言っていいほど高圧力が利用されるようになってきていますが,非常に高い圧力が必要であったり,特殊な測定であったり,圧力の静水圧性や異方性圧縮の制御が重要であったりする場合などには,高圧力技術に不慣れなグループにとってはハードルが高くなってしまいます。また,高圧力下の物性測定により,新奇な現象が発見される場合は多々ありますが,精密に物性を調べようとすると,圧力が高くなるほど測定精度を上げるのが困難になり壁に突き当たることもしばしばあると思われます。このような話は時々聞こえてきますが,今後の科学の発展のためにも,高圧力技術開発は重要であるとの認識を新たにしております。例えば,現在の研究・作業グループが対象としている,次世代の大型放射光施設利用では,測定精度の改善や,新しい測定手段の開発などが期待でき,高圧力科学の裾野がさらに広がるのではないかと期待しています。
学会の会員数は約600 名前後で毎年推移しており,それほど大きな規模ではありませんが,お互いの顔が見え,会話できる雰囲気があります。こういった雰囲気は今後も大事にしたいと思っています。学会運営を陰で支えてくださっている事務局も3 年目を迎え,だいぶ軌道に乗ってまいりました。また,学会業務が円滑に進むよう,今年度は評議員の皆様にも業務を分担していただいております。評議員,幹事の皆様の助けをお借りしながら,活発な活動を推し進めていきたいと考えております。会員の皆様のご協力をお願いいたします。
〒156-8550 東京都世田谷区桜上水4-25-40 日本大学文理学部 物理学科
College of Humanities and Sciences, Nihon University Office of General Affairs 3-25-40 Sakurajosui Setagaya-Ku, Tokyo 156-8550
《高圧力の科学と技術 第24巻第1号(2014年2月20日発行)巻頭言》
以前の「会長の挨拶」
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「相互理解」と「融合」長谷川 正
《高圧力の科学と技術 第30巻第1号(2020年7月4日発行)巻頭言》 -
「幅広い分野の会員組織化を目指して」入舩 徹男
《高圧力の科学と技術 第28巻第1号(2018年5月23日発行)巻頭言》 -
「異分野間の交流促進に向けて」谷口 尚
《高圧力の科学と技術 第26巻第1号(2016年3月1日発行)巻頭言》 -
「高圧力学会の新たな出発に向かって」上床 美也
《高圧力の科学と技術 第22巻第1号(2012年2月20日発行)巻頭言》 -
「学会設立20周年を迎えて」上野 正勝
《高圧力の科学と技術 第20巻第1号(2010年2月20日発行)巻頭言》 -
「次代の人材を育む学会に」青木 勝敏
《高圧力の科学と技術 第18巻第1号(2008年2月20日発行)巻頭言》 -
「日本高圧力学会会長に就任して」財部 健一
《高圧力の科学と技術 第16巻第1号(2006年2月20日発行)巻頭言》