会長の挨拶
魅力ある学会とは
日本高圧力学会会長 清水 克哉(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
振り返ると,1990年に大阪開催の高圧討論会で発表してから,日本高圧力学会と高圧討論会に参加するようになりました。10年前の2011年には,はじめて渉外幹事として役員をさせていただき,翌2012年には,所属する大阪大学の豊中キャンパスで高圧討論会が開催され,一会員ではなくその運営にも携わることができたことで,高圧討論会と本学会の魅力を再認識しました。一昨年から副会長として学会の運営に携わらせていただいていました。このたび本学会の会長へ選任いただき,会長として何をすべきか,どのような貢献が出来るのかなどを考えつつ,その責任をあらためて感じています。
巻頭言の執筆にあたって思うことを表題に掲げて書かせていただきたいと思います。学会の会員数はこの数年にわたって減少が続いています。魅力の指標を学会の行事や活動が入会によってどれくらいメリットとなると考えてもらえるかだとすれば,この状況は大変残念なのですが,このような会員数の減少は他の学会においてもみられているとのことです。政策や経済状況の変化に伴って,研究拠点や高圧関連企業の事業の縮小などが進み,それらによる高圧力の研究者の絶対数の減少はこの原因のひとつとしてとして思いあたります。これと同じくらいに,高圧力の技術が各方面へと浸透したこともその原因にあるのではないかと思っています。これ自体は学会としては喜ぶべきことなのですが,両刃の剣のようでもあります。かつての低温発生技術のように,高圧発生技術も汎用実験手法のひとつとなって,必要な高圧力の技術や知識が研究室に備わるようになってきました。学会の会員にならなくとも,ある程度のことであればインターネット上の記事や映像で事足りるようになってきました。対面でなくても,オンライン講義や会議で十分であって,その方が便利な場合もある今の状況に投影されているようにも思えます。今後ますます情報がいつでもどこでも得られるようになるでしょう。このまま学会の会員になる必要性は低下していくのでしょうか。
直近の第62回の高圧討論会は姫路にて現地開催されました。オンライン式の講演と聴講方法を確保されるなど運営には相当なご苦労があったと想像しますが,参加された方々が口にされた,やっぱり討論会はこうじゃないとね,という言葉によって,討論会の成功と現地に集うことの魅力が再確認できたと感じました。ここにこれからの学会の魅力を再構築する礎があるように思いました。そのために具体的には何をすべきかはまだはっきり見えてはきませんが,これまでに蓄積された高圧力の技術や知識を効率的に共有することができるようになった現在の環境を生かし,それと同時にPCの画面を通じてでは伝わらない感覚をつかった交流を両立させることに築いていくべきものがあるように思っています。
学会の運営における課題は会員数の減少だけではありませんが,これまでの多くの役員の方々が取り組まれてきたことを引き継ぎ,より多くの人々に魅力が感じられる学会を目指したいと思っております。会員の皆様のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
以前の「会長の挨拶」
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「相互理解」と「融合」長谷川 正
《高圧力の科学と技術 第30巻第1号(2020年7月4日発行)巻頭言》 -
「幅広い分野の会員組織化を目指して」入舩 徹男
《高圧力の科学と技術 第28巻第1号(2018年5月23日発行)巻頭言》 -
「異分野間の交流促進に向けて」谷口 尚
《高圧力の科学と技術 第26巻第1号(2016年3月1日発行)巻頭言》 -
「「相互理解」と「融合」」高橋 博樹
《高圧力の科学と技術 第24巻第1号(2014年2月20日発行)巻頭言》 -
「高圧力学会の新たな出発に向かって」上床 美也
《高圧力の科学と技術 第22巻第1号(2012年2月20日発行)巻頭言》 -
「学会設立20周年を迎えて」上野 正勝
《高圧力の科学と技術 第20巻第1号(2010年2月20日発行)巻頭言》 -
「次代の人材を育む学会に」青木 勝敏
《高圧力の科学と技術 第18巻第1号(2008年2月20日発行)巻頭言》 -
「日本高圧力学会会長に就任して」財部 健一
《高圧力の科学と技術 第16巻第1号(2006年2月20日発行)巻頭言》