会長の挨拶 2019年
「相互理解」と「融合」
日本高圧力学会会長 長谷川 正(名古屋大学大学院工学研究科物質科学専攻)
日本高圧力学会は,令和元年という新しい時代に30周年を迎え,その源であります高圧討論会は60回を数えました。まずは,これまで学会を牽引してこられた歴代の会長をはじめ多くの諸先輩方,また学会を支えていただきました賛助会員と事務局の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。30周年,60回という節目の時期に,会長として選任されましたことは身に余る光栄でありますが,それと同時に,その責任の重大さを日に日に感じております。
日本の高圧力研究の実力は間違いなく世界トップクラスでありますが,さらなる発展を目指して,化学,地球科学,物理学といった高圧力研究の従来分野を一層深化させるとともに,材料科学に加え生命科学,生物学,食品科学といった高圧力科学の萌芽分野において意欲的に展開していくことが重要であります。そして最も重要な点は,これら異分野間の相互理解と融合が進むことにより,本学会の特徴であります学際性を活かした新しい学術が創成され,幅広く科学と技術の発展に貢献することです。
一方で,日本の高圧力研究の環境が様々な課題に直面しているのも事実です。例えば,国内の高圧力研究拠点の減少傾向,関連企業の事業縮小による技術の空洞化が始まりつつある,といった点は深刻であり,喫緊に対処するべき課題です。これらは,学会の会員数や財政,討論会や研究会の参加者数,学会誌の維持,若手の育成など,最近の継続課題とも密接に関係しています。そのため,既存拠点の維持と新規拠点の形成,拠点間の連携,大型予算の獲得,学産官や大高民の連携に加えて,学会外への積極的なアピールなど,学会として短中期的に戦略的に対策することも必要です。
私も含めて多くの会員の皆様が,高圧力を研究手段とする研究者,すなわち高圧ユーザーは明らかに増えていると感じています。これらの高圧ユーザーの皆さんに学会に入会していただくためには,討論会やセミナーが高圧力技術の専門家だけの場ではなく,専門家とユーザーが互いによく理解して融合できる場とする必要があります。また,賛助会員の増加は,財政上のみならず学術上も学会の生命線であり,従来分野に加えて多様な新規分野の賛助会員の勧誘も考えていくべきです。これらの認識のもと,学会外との積極的なコミュニケーションをとるべく早急に具体的な方策を立て,高圧力の科学と技術の普及および学会の財政の立て直しを図りたいと思います。
毎年,討論会の懇親会には多くの学生や若手研究者が参加しますが,これは他の学会にない高圧力学会の特徴です。いつも若い世代のパワーを感じ,この時間は日本の高圧力研究の明るい未来を確信します。学生会員を含めた若手会員同士,世代を超えた会員間のコミュニケーションと相互理解も重要です.討論会の若手の会と懇親会に加えて,さらに方策を講じたいと思っています。4年後の2023年にはAIRAPT国際会議が日本で開催されることが決定しています。若い世代の皆さんのためにも,また,日本高圧力学会のプレゼンスを一層高めるためにも,学会として,All Japan, One Teamの体制で全面的に支えていくつもりです。入舩前会長の提案によるAIRAPT委員の創設やAIRAPT特別委員会の設置をはじめ,すでに関係方面で準備が始まっております。
最後に,学会員の皆様の声に耳を傾けながら,幅の広い世代の様々な分野の研究者とエンジニアが一堂に会する討論会懇親会の雰囲気を学会がいつまでも維持できるよう,役員と評議員の皆様のご協力を仰ぎながら,この2年間尽力するつもりです。賛助会員と個人会員の皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
日本の高圧力研究の実力は間違いなく世界トップクラスでありますが,さらなる発展を目指して,化学,地球科学,物理学といった高圧力研究の従来分野を一層深化させるとともに,材料科学に加え生命科学,生物学,食品科学といった高圧力科学の萌芽分野において意欲的に展開していくことが重要であります。そして最も重要な点は,これら異分野間の相互理解と融合が進むことにより,本学会の特徴であります学際性を活かした新しい学術が創成され,幅広く科学と技術の発展に貢献することです。
一方で,日本の高圧力研究の環境が様々な課題に直面しているのも事実です。例えば,国内の高圧力研究拠点の減少傾向,関連企業の事業縮小による技術の空洞化が始まりつつある,といった点は深刻であり,喫緊に対処するべき課題です。これらは,学会の会員数や財政,討論会や研究会の参加者数,学会誌の維持,若手の育成など,最近の継続課題とも密接に関係しています。そのため,既存拠点の維持と新規拠点の形成,拠点間の連携,大型予算の獲得,学産官や大高民の連携に加えて,学会外への積極的なアピールなど,学会として短中期的に戦略的に対策することも必要です。
私も含めて多くの会員の皆様が,高圧力を研究手段とする研究者,すなわち高圧ユーザーは明らかに増えていると感じています。これらの高圧ユーザーの皆さんに学会に入会していただくためには,討論会やセミナーが高圧力技術の専門家だけの場ではなく,専門家とユーザーが互いによく理解して融合できる場とする必要があります。また,賛助会員の増加は,財政上のみならず学術上も学会の生命線であり,従来分野に加えて多様な新規分野の賛助会員の勧誘も考えていくべきです。これらの認識のもと,学会外との積極的なコミュニケーションをとるべく早急に具体的な方策を立て,高圧力の科学と技術の普及および学会の財政の立て直しを図りたいと思います。
毎年,討論会の懇親会には多くの学生や若手研究者が参加しますが,これは他の学会にない高圧力学会の特徴です。いつも若い世代のパワーを感じ,この時間は日本の高圧力研究の明るい未来を確信します。学生会員を含めた若手会員同士,世代を超えた会員間のコミュニケーションと相互理解も重要です.討論会の若手の会と懇親会に加えて,さらに方策を講じたいと思っています。4年後の2023年にはAIRAPT国際会議が日本で開催されることが決定しています。若い世代の皆さんのためにも,また,日本高圧力学会のプレゼンスを一層高めるためにも,学会として,All Japan, One Teamの体制で全面的に支えていくつもりです。入舩前会長の提案によるAIRAPT委員の創設やAIRAPT特別委員会の設置をはじめ,すでに関係方面で準備が始まっております。
最後に,学会員の皆様の声に耳を傾けながら,幅の広い世代の様々な分野の研究者とエンジニアが一堂に会する討論会懇親会の雰囲気を学会がいつまでも維持できるよう,役員と評議員の皆様のご協力を仰ぎながら,この2年間尽力するつもりです。賛助会員と個人会員の皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
〒464-8603 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院工学研究科物質科学専攻
Department of Materials Physics, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi 464-8603
《2019年11月》
以前の「会長の挨拶」
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「幅広い分野の会員組織化を目指して」入舩 徹男
《高圧力の科学と技術 第28巻第1号(2018年5月23日発行)巻頭言》 -
「異分野間の交流促進に向けて」谷口 尚
《高圧力の科学と技術 第26巻第1号(2016年3月1日発行)巻頭言》 -
「「相互理解」と「融合」」高橋 博樹
《高圧力の科学と技術 第24巻第1号(2014年2月20日発行)巻頭言》 -
「高圧力学会の新たな出発に向かって」上床 美也
《高圧力の科学と技術 第22巻第1号(2012年2月20日発行)巻頭言》 -
「学会設立20周年を迎えて」上野 正勝
《高圧力の科学と技術 第20巻第1号(2010年2月20日発行)巻頭言》 -
「次代の人材を育む学会に」青木 勝敏
《高圧力の科学と技術 第18巻第1号(2008年2月20日発行)巻頭言》 -
「日本高圧力学会会長に就任して」財部 健一
《高圧力の科学と技術 第16巻第1号(2006年2月20日発行)巻頭言》