組織委員会委員長 八木 健彦
Joint AIRAPT-22 & HPCJ-50国際会議は,大変好評のうちに無事終えることができた。これも組織委員会のメンバーを始め,多数の方々の大変な努力のたまものである。組織委員長として,改めて関係者に深くお礼を申し上げたい。
今回のAIRAPTは7年ほど前に,当時高圧力学会会長を務めていた東工大の近藤建一氏が,「日本の高圧研究の盛んさとその高いレベルを考えると,10年に1度くらいはAIRAPTを日本に招致しても良いのではないか?」と発議したのがきっかけとなって,準備を開始したものである。それ以来,世界経済の悪化や新型インフルエンザの流行などさまざまな不安要因が生じて心配することも多々あったが,幸い最終的には約24カ国から500名近い参加者を得ることができ,大変盛会になったことは喜ばしい。5日間の会期中に3件の総会講演,195件の口頭発表,および266件のポスター発表を通して,高圧力の科学と技術に関する最先端の成果が披露された。諸外国からの研究者たちは,Jamieson賞を受賞した愛媛大の桑山氏の講演に代表されるように,日本の若手研究者の仕事の質と量に大変強い印象をうけたようで,日本の高圧研究を世界に発信するという当初の目的は充分達成されたように思われる。会場となった東京国際交流館やお台場の一帯は,日本に詳しい外国人でも初めてという人が多く,特に新橋から「ゆりかもめ」の車窓に拡がる景色は,現代の日本を象徴するような近代的建造物群が展開し,多くの人々にとって印象深かったようである。また懇親会は会議場からかなり離れた東京白金の八芳園で行われたが,美しい日本庭園を始め着物や日本酒など,日本文化の一端を多くの研究者に楽しんでもらうことができた。
諸外国で開催されるAIRAPTでは,組織委員長の研究室がほぼ単独で準備を進めることが多いが,日本では高圧力学会を母体として組織委員会が結成され,周到な準備が進められてきた。打ち合わせの会合だけでなく,メーリングリストを通してのやりとりも頻繁に行われ,すばらしいチームワークと各委員の献身的な努力が実って,全般的には大変スムースな運営をすることができた。ただひとつ残念だったのは,財政状況の見通しの厳しさから,若手参加者に対する補助がほとんどできなかったことである。国内からは例年の高圧討論会ほどではないにせよかなりの学生参加があったが,諸外国,特にアジア諸国からの学生はきわめて限られていた。最終的な登録者数がもっと早めに掴めていたら,若手の参加補助も可能だったのにと悔やまれる。
近年,国際的な研究交流は格段に容易になったが,それでも特に若手にとっては,直接肌で世界の研究の流れに接する機会は限られている。今回の会議が,日本の高圧研究の分野で世界をリードする人材が育つ,ひとつの契機になれば大変うれしいことである。
《高圧力の科学と技術 第19巻第4号(2009年11月20日発行)p. 291》